小椋佳の「コンプリート・シングル・コレクション 1971~1976」を聴くと、その時代の様々な思い出が音楽のお蔭で走馬灯のように蘇ってきます。1971~76年といえば、私にとっても20歳前後の頃の「青春真っ只中」の時代に当たりますので。「シンガー・ソング・ライター」という言葉がまだ無かった頃です。本職の銀行勤めの傍らこれだけの素晴らしい作品を世にだし、多くの若者に支持された功績は「日曜シンガー・ソング・ライターの鏡」と言えましょう。
そういう意味でも「さらば青春」を格別の思いで聴いています。50歳を越え、今更「さらば青春」でもないでしょうが、あの時代の「思い出の曲」の一つですから。
この「さらば青春」の伸びやかな歌唱と、爽やかな歌詞は、「永遠の青春ソング」の代名詞です。その後、本当に多くの作品を生み出してきましたが、まさしく彼の原点とも言うべき作品です。今から見るとシンプルな曲の構成ですが、味わい深い歌詞に「シンガー・ソングライター小椋佳」というものの萌芽をみます。
「青春」なんて、その時代を過ぎ去った者が振り返って使う言葉ですね。当事者達の若者は、日常に追われて、一生懸命で、そんな実感なんて無いかもしれません。未来は見えていなくて、自分に何ができるか不安で、そして人間関係も未熟で傷つけあってばかりいる頃ですから。