受験校すべてをクリアした娘との受験戦争3年間の記録と、第一志望を逃した息子との記録(こちらは小説)。勝者・敗者と2つの異なる結果を迎えることになる1つの家族の記録。塾の判定試験の点数のほか、塾の移籍・特訓・受験校の下見・入試・結果発表などの受験によって起こったできごとが、その場で交わされた家族の心理情景とともに、父親の目線で詳しく描かれている。
「こんなに勉強しているのに、どうして私だけが伸びないんだろう」
この場面で私は涙してしまった。(その後もいくつかあるが)
もちろん、この本は中学受験をこれから迎える家族にとって大きな励みの一冊となるであろう。しかし同時に、私のように子供を持たない者にも、「父親から見た」家族の情景を追体験するかのように、ぴりりと温かな視界を想起させてくれる。
実に誠実に、虚飾も大げさな表現もない その場所にいた ありのままの「父親」が記録されていた。