単なる受験テクニック本ではない良書
世の中に、受験テクニックの指南書や合格体験記の類はたくさんあるが、本書はそれらの類書をはるかにしのぐ「お役立ち本」である。その理由は二つある。 第一は、本書では著者と娘の「試行錯誤」が余すところなく書かれている点だ。成功談だけでなく失敗談(こちらの方が多いくらい)までが、著者の冷静な視点できっちり記されているのは貴重である。失敗から新たな戦略が立てられる。戦略立案→実行→失敗→戦略の練り直し→成功→新たな戦略立案、というサイクルで、いかに受験の「勝利」に至ったかの貴重な記録となっている。 第二は、著者がかつて司法試験合格を目指していたときのさまざまな勉強法も紹介され、それが娘さんの勉強方法の説明とうまく噛み合って、絶妙な相乗効果を醸し出している点だ。そのせいで、本書は単なる中学受験のテクニックにとどまらず、何らかの勉強をしたい社会人一般にとっても、格好の指南書になっている。 編集部の校正がやや甘いのか、いくつか誤植があるのは残念だがこれは著者の責任ではないだろう。そんな些事を吹き飛ばしてしまうくらいの良書と言える。クールな語り口の行間から、娘さんへの愛情がじんわりと伝わってくるのも好ましい。
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